「取適法(中小受託取引適正化法)」について、法律監修をさせていただきました

取適法(とりてきほう)? この通称で検索してこのコラムをご覧になられている方はご存知と思いますが、一般的にはまだあまり知られていないかもしれません。正式名称は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」、略称が「中小受託取引適正化法」、通称が「取適法」です。これまであった下請代金支払遅延等防止法(下請法)が改正され、取適法として令和8年1月1日から施行されることになりました。
その改正のポイントを簡単に説明させていただくと、次のとおりです。
第1に、適用対象となる事業者の基準に、従業員数による基準が追加されたことです(第2条8項、9項)。
これまでの資本金額等による基準だけでなく、従業員数による基準が新設され、規制と保護の対象が拡充されました。特に、委託側の従業員数が300人(役務提供委託等の場合は100人)を超える場合は、注意しなければなりません。
第2に、適用対象となる取引に、特定運送委託が追加されたことです(第2条5項)。
特定運送委託とは、物品の販売等をしている事業者が、その物品の販売先等に対する運送を委託する場合の取引のことをいいます。立場の弱い物流業者が、荷役(荷積み)や荷待ちを無償でさせられていたということが社会問題にもなっており、それらの背景等をふまえて追加されました。
第3に、協議に応じない一方的な代金決定の禁止が追加されたことです(第5条2項4号)。
委託先の中小受託事業者から価格協議の求めがあったにもかかわらず、委託事業者が協議に応じず、または必要な説明や情報の提供をせず、一方的に価格を決定する行為が禁止されています。
第4に、手形払いが禁止されたことです(第5条1項2号)。
これまでも、サイトが60日を超える手形による支払は、禁止されていました。さらに今回、支払手段としての手形払いが、禁止されることになりました。なお、電子記録債権やファクタリングについても、支払期日までに代金額を得ることが困難であるものについては、同様に禁止されます。
第5に、面的執行が強化されたことです(第5条1項7号、第8条、第13条)。
これまで事業を所管する省庁には調査権限のみが与えられているにすぎませんでしたが、公正取引委員会、中小企業庁、事業所管省庁の連携した執行をより拡充していく必要があるため、事業所管省庁の主務大臣に指導・助言権限を付与することになりました。また、「報復措置の禁止」の申告先として、公正取引委員会、中小企業庁長官だけでなく事業所管省庁の主務大臣が追加されました。
その他、「親」とか「下請」とかいう用語も、対等な関係ではないという語感を与えるとして使わないようになりました。具体的には、「親事業者」を「委託事業者」 、「下請事業者」を「中小受託事業者 」 、「下請代金」を「製造委託等代金」とすることになっています。
「取適法(とりてきほう)」という名前自体が、まだ十分に知られていない状況にあるなか、自分(自社)にはどのように関係あるのか、または関係ないのか、簡単に知りたいとお考えの方も多いことでしょう。
そのようなご要望に応えるため、当事務所の松渓 康弁護士が法律監修させていただき、株式会社インソース様から「取適法(中小受託取引適正化法)」解説動画が販売されることになりました。この動画では、取適法への改正ポイントを含め、改めて法全体を簡単に理解していただくためスライドを使って解説しています。
まず簡単に取適法を知りたいとお考えの方にとっては、とても有益な内容になっています。ご興味のある方は、株式会社インソース様の「動画百貨店」ウェブサイトをご覧ください。

