破産手続中に債務者が亡くなったら、どうなるのか?

 

 司法統計を見ると、破産新受件数が増えているわけではないのですが(全地裁、令和3年1~7月:42,476件、令和2年1~7月44,985件)、私が関わらせていただいている法律相談では、借金問題(債務整理)が増えているような感があります。

 さて今回は、裁判所へ破産手続開始申立てをした後、債務者が亡くなった場合について、整理してみましょう。これは、なにも債務者本人(被相続人)だけの問題ではなく、相続人にも関係する重要なことがらだからです。

【申立て後、破産手続開始決定前の死亡】
 破産手続開始の申立て後、破産手続開始決定前に債務者が死亡した場合、破産手続は中断します。
 ただし、裁判所は、相続債権者、受遺者、相続人、相続財産の管理人又は遺言執行者の続行の申立て(相続開始後1カ月以内のもの)により、その相続財産について破産手続を続行する旨の決定をすることができます(破産法226条1項、2項)。
 続行の申立てが無かった場合又は申立てを却下する裁判が確定したとき、破産手続は終了します(同条3項)。

【破産手続開始決定後の死亡】
 破産手続開始決定後に破産者(債務者)が死亡した場合、裁判所は、相続財産について破産手続を続行します(同法227条)。
 相続財産で満足が得られなかった債権については、相続人が相続放棄又は限定承認をしていなければ、相続人に対して請求されることになります。

 債権が相続財産で満足を得られることは多くないでしょうから、結局、破産手続開始決定前後にかかわらず、相続人は被相続人の債務を引き継いで負うことになります。
 債務を負うことを免れるため、相続人は、相続放棄(民法938条)又は限定承認(同法922条)する必要があります。
 多くの相続人は相続放棄を検討することになりますが、自己のために相続の開始があったことを知った時から3カ月という期間制限があります(同法915条1項)。
 3カ月のうちに家庭裁判所へ申述しなければ相続放棄をできないルールがありますので、急がなければなりません。

 不安のある方は、ぜひ弁護士等の専門家へ相談していただくようお勧めします。