合同会社と株式会社、どちらにするか

 新規事業で会社立ち上げを考えていらっしゃるクライアントから、合同会社にするか・株式会社にするか、ご相談を受けました。 

 合同会社は、平成18年の会社法改正で、新設されました。会社法では、大きく分類すると、株式会社と持分会社(同法575条第1項)の設立が認められており、合同会社は持分会社の1つです。
 なぜ、合同会社か株式会社か、という選択になるかというと、いずれも出資者が有限責任しか負わない(出資の範囲でしか会社の債務の弁済責任を負わない)からです(同法104条、580条第2項)。持分会社には、合名会社、合資会社もあるのですが、無限責任の出資者がいなくてはなりません。 

 では、合同会社と株式会社には、どのような違いがあるでしょうか。
1.出資者(所有)と経営の関係
 合同会社では、出資者を「社員」と呼びます。社員といっても、従業員のことではありません。社員は、業務を執行する社員(業務執行社員)を定款で定める場合を除き、会社の業務を執行しますので(同法590条第1項)、所有と経営は分離していません。他方、株式会社では、原則として、取締役が会社の業務を執行することになっており(同法348条第1項)、所有と経営が分離されています。
2.議決権の違い
 合同会社の場合、原則として、社員はそれぞれ1票を持ち、業務は社員の過半数をもって決定します(同法590条第2項)。他方、株式会社の最終意思決定機関である株主総会の議決権は、原則として出資割合によることとなります(同法308条第1項)。
3.合同会社は設立費用が安い
 設立時の登録免許税が、合同会社は最低6万円(資本金の0.7%が6万円以下の場合)で、株式会社(最低15万円)より9万円安くなります。また、合同会社は、設立時に公証役場での定款認証が不要なので、株式会社(認証費用5万円)より5万円安くなります。
4.決算公告が不要
 株式会社は決算公告をしなければなりませんが(同法440条第1項)、合同会社はその義務がありません。
5.社会的イメージ
 合同会社は、新設されてから15年ほどしか経っていないので、まだ知名度が低いということは否めません。やはり、株式会社でないとイメージが良くない、と考える方は、合同会社を避けた方が良いかもしれません。しかし、Apple Japanや西友など有名な会社が合同会社を選択しています。重要なのは、会社形態より事業内容と考えれば、気にすることはないでしょう。

 以上、合同会社と株式会社の違いを、簡単に整理しました。しかし、実際には、色々と例外がありますので、会社設立するにあたっては、企業経営に明るい弁護士など専門家へ相談されることをおすすめします。